分野別実務修習-弁護修習 written by 76期司法修習生 佐藤 和樹
1 はじめに
今回は、分野別実務修習のうち、弁護修習についてご紹介したいと思います。
弁護修習は、各修習地の弁護士事務所に修習生がお伺いし、指導担当弁護士の指導のもとで弁護士実務を学ぶ修習です。
弁護修習は、他の修習とは異なり、指導担当弁護士1人に対して、1人の修習生が配属されます。そのため、弁護修習中は、指導担当弁護士から直接、多くのことを学ぶことができますので、大変濃い時間を過ごすことができます。
基本的には、弁護修習期間中は1つの事務所に配属されることになりますが、修習地によっては2つの事務所(メインの事務所:約1ヶ月半、サブの事務所:約半月の期間)に配属されることもあります。
また、配属される事務所や指導担当弁護士によって、特化している専門分野や注力している分野などもあり、今まで経験をしたことがない分野を知ることができるきっかけにもなります。
このように、弁護修習では、指導担当弁護士から直接に様々な経験・体験を得ることができる貴重な機会です。弁護修習は、指導担当弁護士によって修習内容が異なるところが多いですが、大まかな内容は以下の通りになります。
2 司法試験合格直後‐司法修習生採用選考への申込み
1 法律相談
まずは、法律相談に同席することができます。法律相談は、事務所内での法律相談や市役所等の一般法律相談など多種多様です。また、法律相談の内容も様々です。
初回の法律相談の際には、事前に相談者の方からどのような話を聴取していたのか、実際の法律相談にどのように相談者から事情を聴取しているのか等、大変勉強になることが多いです。
2回目以降の法律相談(打ち合わせ)の場合には、すでに依頼者との関係が一定程度、構築されている状態でお話をお聞きすることになりますが、その際、進捗報告や今後の見通しなどをどのように依頼者に説明をしているのか、について間近で知ることができます。
修習生は、事前に指導担当弁護士から法律相談内容の事情の説明を受け、実際の法律相談に同席することになります。その際、相談者が何を求めているのか、なぜ相談をしようと思ったのか、相談内容についてどのような法的アドバイスをすることができるか等、弁護士としての視点から事案を検討します。
2 期日
修習生は、指導担当弁護士が担当している事件について、裁判所に係属している事件について、期日に立ち会うことができます。
その際、訴訟記録を読み込み、期日にてどのようなことがなされるのか(なされたのか)等について検討をすることが求められます。そのうえで、何が争点で、どのような主張・立証活動を今後していく必要があるのかについて、指導担当弁護士との問答を通して検討することがあります。
また、弁護士は一方当事者の代理人であるため、依頼者の言い分をどのように裁判所に対して伝えるかが重要です。各指導担当弁護士のやり方にもよりますが、それぞれの指導担当弁護士が持つノウハウを体験することができます。
3 接見
刑事事件につき、修習生は接見に同席することができます。当番弁護や国選弁護、私選弁護など様々ですが、少なくとも1回は接見に同席することができると思います。
接見は、被疑者・被告人を弁護するうえで、非常に重要な機会です。公判廷で被告人を見る機会はあるかとは思いますが、公判に至るまでに弁護人は被疑者・被告人とどのようにして信頼関係を築いているのかを知ることができます。
また、機会があれば、修習生が被疑者・被告人に対して、指導担当弁護士の指導のもと、質問等をすることもできる場合があります。
4 弁護団活動
弁護団に加わっている指導担当弁護士の場合、弁護団活動に修習生も同席することができます。
弁護団活動は、事件内容も難解複雑なものが多く、活動している弁護士も多数に渡ります。現在は、オンライン(zoom等)で会議がなされることが多く、弁護団長が多くの弁護士を取りまとめ、弁護団としての意見を1つに集約していく過程を垣間見ることができます。
あまり弁護団活動のイメージが沸かない方が多いとは思いますが、弁護修習では、タイミングが合えば弁護団活動の一部に立ち会うことができます。
5 その他
その他として、指導担当弁護士によっても異なりますが、弁護士がどのように顧客を獲得しているのか等を知る機会として、時間外に食事会に参加させて頂くこともあります。
参加するか否かは、当然ですが修習生個々人の自由です。
ですが、指導担当弁護士が新規顧客を獲得するため、時間外にどのような活動をしているのかを知ることができるよい機会ですので、無理をしない範囲で積極的に参加することをお勧めします(実際の実務に出た後では、他の弁護士がどのようにして顧客を獲得しているのかは、ほぼわからないと言って良いでしょう。そのため、修習生という立場であるからこそ、教えてくれることもありますので、積極的に聞くことをお勧めします)。
3 最後に
このように、弁護修習は指導担当弁護士によって、修習内容は多種多様です。だからこそ、指導担当弁護士との関係を大切にし、多くのことを学び・経験することをお勧めします。